神なる少女  最終話

 ・・・・・・以上までをノートに書き記し、正樹はペンを置いた。
「ふぅ・・・・・・」

目的を終え、小さなため息を吐いた。果たしてこれを誰が読むのだろうか。誰も読まない気がするのは、おそらく、気のせいではないだろう。

「果たして世界は今後、どうなって行くんだろうか・・・・・・」

 虚脱感に満ちた呟きを発しながら、今度は深く大きなため息を吐いた。
今後、世界がどうなって行くかなど、宙に問うたところで答えが返ってくるはずがない。自分たちの他にもまだ生き残った人がいるかもしれないし、あるいはこのまま地球は死の星へと変わってしまうのかもしれない。だが、もういい。どうなろうと、どうでもいいのだ。もう、疲れたのだから・・・・・・。
 ふと、正樹の視線が横に動いた。隣の部屋で眠っていた綾乃が起きてきたのだ。
 正樹が優しい声で尋ねた。

「どうした綾乃、眠れないのか」
「寝たよ、少しね。正樹こそ眠らないの?」
「これから寝るよ。ちょっと考えごとをしていたんだ」
「そう・・・・・・」

 それから綾乃は少し微笑んで、正樹に寄り添った。

「わたしね、いま、夢を見たの。ちょっと変わった夢を」
「へぇ、それはどんな夢なんだい」
「変な夢よ。わたしと正樹がアダムとイブになって、新しい世界の始まりになるって夢。不毛な世界に、新しい生命の息吹が興るの。おかしな夢でしょう。でも、わたし、とっても幸せだった。その夢が実現すればいいのになあって思ったの」

 だからね、正樹――

「これからその夢を、叶えましょう」
「・・・・・・」

 正樹は思った。もしかしたら綾乃は、自分の幼なじみは、この世の理を作る「神」なのではないか、と。
 これより、世界の再生が始まった。



                                 了
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神なる少女  第11話

 七月を間近に控えた六月末日、巨大な物体が地球と月の中間点にて静止したとの情報が世界中を駆け巡った。それが宇宙人の母船だったのである。
 人類史上初となる異星人との遭遇に、世界は大パニックに陥った。地球側は宇宙人とのコンタクトを試みようと国連や各国、果ては個人にいたるまでが通信を送ったが、宇宙人側からの返答は何もなかった。黙殺、というべきであろう。宇宙人側は、人類とコンタクトを取る気はさらさらなかったようである。
 そして、そうしている間にも、宇宙人の母船からは大量の小型の円盤(といっても直径が一キロメートルもあろうかという巨大な宇宙船)が次々と吐き出され、世界各国に配置されていった。
 この行動に対し、地球側は宇宙人が非友好的な手段に出るものと予想し、アメリカ軍をはじめとする各国の軍隊は臨戦体勢をとった。
 そして世界中が緊張して見守るなか、ついに開戦したのである。
 地球に飛来した円盤からさらに極小の円盤が次々と吐き出され、地球を問答無用で攻撃しはじめたのである。世界は瞬く間に戦火に包まれた。むろん、各国の軍隊も応戦したが、その効果は皆無だった。人類側の最新兵器はまるで通用せず、各国の軍隊はわずか数時間で壊滅した。人類は最後の切り札として核兵器を相次いで放ったが、それをもってしても宇宙人を倒すことはできなかったのである。
 宇宙人の攻撃により、地上は大混乱に陥った。主要な都市、軍事基地、工業地帯、発電施設、エネルギー貯蔵施設などが次々と破壊され、ライフラインは寸断された。秩序は乱れ、法は無視され、略奪が相次ぎ、世界中が逃げ惑う人々でごった返した。
 宇宙人側は人間を次々と殺したが、全滅はさせなかった。なぜならば、宇宙人の目的は人間だったからである。否、人間だけでなく、地球に溢れる生命の全てが宇宙人の目的だった。
 宇宙人は地球の資源に興味がなかった。豊富にある水や空気にもまるで興味がなかったようである。彼らが欲したのは生命だった。宇宙人は人間をはじめとする動植物を貪欲に欲した。理由は定かではない。だが、地球の豊穣な生命が彼らには魅力的な宝に見えたようである。宇宙人は地球上のありとあらゆる場所で生命を収奪した。まるで掃除機がゴミを吸い上げるかのごとく、地上から水中まで、あるいは空中から地中まで、地球の生命の全てを回収した。そして地球からは、瞬く間に生命の痕跡が途絶えたのであった。
 宇宙人の生命狩りがおこなわれるなか、正樹と綾乃は必死に逃げ続けた。この時、両親や友人、知人たちの安否はすでに不明になっていた。ただただ、ふたりは宇宙人の生命狩りから逃れるため、必死で隠れ続けた。
 ある時は山に隠れ、またある時は廃墟と化した都市に逃げ込み、あるいは地下に潜んで、とにかく逃げた。
 逃避の最中、恐怖に怯えた綾乃が叫んだ。

「もうヤダ! もう止めてよ、お願いだから・・・・・・」

 幸いにも、綾乃の能力は健在だった。その証拠として、宇宙人が引き揚げていったからである。
 宇宙人は再び宇宙の彼方へ去っていった。地球の生命を根こそぎ奪って。連れ去られた地球の生命が今後どのような目に遭遇するかは定かではない。もはや知ることが叶わぬ領域であったからだ。ただ、後に残されたのは、生命の痕跡が感じられない不毛な世界だけであった。
正樹は綾乃を連れ、各地を転々とした。町や都市を巡り、缶詰や非常食を集めながら、他に誰かいないかを探しながら。
 宇宙人が去ってから一か月の間、ふたりはあてもなくさ迷った。
誰もいない世界を・・・・・・。
何もいない世界を・・・・・・。
砂埃が舞う、瓦礫と廃墟のみが点在する世界を・・・・・・。
一年前には想像すらできなかった世界を、ふたりはお互いを支えながらさ迷い歩いた。だが、放浪は無意味な行為でしかなかった。一か月もの間、かつて「日本」と呼ばれていた国を歩きに歩いたが、誰も見つからなかったからである。ふたりは疲れ、とある廃墟に身を潜めた。
 そして、今に至る。

神なる少女  第10話

 隣国への隕石衝突から三年の月日が経過した。正樹と綾乃は大学生となっていた。もちろん、進学先は同じ大学である。
 この頃になると、ふたりの仲は完全に公認のものとなっていた。別に付き合っていると正式に表明したわけではなかったが、周囲の者は皆、ふたりの両親も含めて、付き合っているとみなしていたのだった。そしてそのことを、ふたりが否定したことは一度もないのだった。
 この三年の間、綾乃の言葉によって起こったと思われる変化は微々たるものであった。応募した懸賞に当たったとか、ふたり揃って大学に合格できたとか、友達が歌手としてデビューしたこととか、隕石衝突と比較すれば些細なことばかりであった。
 だから正樹も油断していたのである。綾乃の能力の凄まじさについてを。
 ある日の日曜日、ふたりは例のごとくデートをしていた。買い物をして、食事をして、映画を視る。ただそれだけの予定だった。だが、この日、デートで映画を視たばっかりに、人類は破滅へと向かうことになってしまったのである。
 ふたりが視た映画はハリウッドが製作したSF映画で、内容は、宇宙人が地球に攻めてきた中でおこなわれる男女の恋愛――というありきたりなストーリーであった。似たような作品なら他にいくらでもありそうな映画だったが、綾乃はとても面白かったらしい。特に、主人公とヒロインの恋愛模様に感動したようで、映画館を出た後、ややうっとりとした様子で語ったものである。

「凄く面白い映画だったね! 絶望の中でもなお貫ける愛、素敵だったなあ。特にクライマックス、重傷を負い、死ぬかもしれない状況のなか、なおもヒロインを守ろうとする主人公の姿、格好良かったね!」
「確かに。実際、瀕死の状態でなおも恋人を守れる男なんて、世の中にはそうはいないからね」

 テンション高くまくしたてる綾乃に対し、正樹はやや冷静な口調でその想いを肯定してみせた。
その一言が、綾乃の気持ちに火を点けたようである。
 綾乃が問うた。いま芽生えた率直な疑問を正樹に対して。

「ねぇ正樹、ひとつ聞いてもいい?」
「ん、なに?」
「・・・・・・もし、わたしたちが同じような目に遭ったとしたら、正樹はわたしのことを守ってくれる?」

 少し照れくさそうな様子で問いかける綾乃に対し、正樹は内心で悪い予感を覚えつつも答えずにはいられなかった。

「も、もちろんだよ。必ず綾乃を守るよ」

 と。
 そう答えなければ自分に危害が及ぶかもしれない。正樹としては反射的にそう思ったわけだが、その返答がかえって事態を悪化させようとは思ってもいなかったようである。
 正樹の返答を受け、綾乃は満面の笑みを浮かべた。そして、うれしそうに言ったのだ。

「なら、宇宙人が攻めてくるといいな。そしたら、映画みたいに正樹に守ってもらえるものね」
「・・・・・・・・・・・・ッッッ!」

 綾乃としては冗談半分に言ったつもりであろうが、正樹を恐怖のどん底に陥れるには十分すぎるほどの威力であった。顔面蒼白になる正樹。嫌な汗が流れだし、思考がフル回転を始めた。
これまで、綾乃の想いが実現化しなかったことはない。どんな無茶な想いも叶ってきた。隕石すら降ってきたのだ。その能力の範囲は、おそらく、宇宙にまで及ぶのだろう。だとしたら・・・・・・。
 恐ろしい結論に至りそうになり、正樹はそこで思考を停止した。
 今度こそ杞憂であってくれ!
 心の底からそう願ったが、正樹の想いは綾乃の想いと違って実現しなかった。デートから一か月後、正樹が「さすがに今回は杞憂だったか・・・・・・」と想いはじめた頃、攻めてきたからである。
宇宙から、宇宙人が。

神なる少女  第9話

数日後、突然流れた臨時のニュース速報を見て、正樹は絶句し、愕然となった。本当に隕石が落ちたのだ。それも隣国の首都のど真ん中に。
 隕石が落ちた直後、隣国のみならず、世界中が大混乱の渦に叩きこまれた。テレビでは連日のように隕石衝突のニュースが流れ、新聞では一か月連続して隕石衝突の記事がトップを飾り、情報が錯綜し、デマが流れ、世界中で株価が大暴落し、世界経済がめちゃくちゃになった。
 後にNASA(アメリカ航空宇宙局)が発表した情報によると、隣国の首都を直撃した隕石の直径はおよそ一八〇メートルで、命中した破壊力は広島型原子爆弾のおよそ三〇〇倍もの威力があったそうだ。
 どうして衝突を事前に把握できなかったのか! という隣国人記者のヒステリックな質問に対し、NASAは会見で次のように答えた。

「隕石の軌道は完全に把握していた。本来であれば地球に衝突するはずがない小惑星であった。それが突如、何らかの理由で軌道が変わり、地球に衝突するコースを描きはじめたのだ。なぜ軌道が変わったのかはわからない。原因は現在、調査中だ」

 会見を見て、正樹は真っ青になった。隕石の軌道が変わった原因を、彼は知っている。綾乃の能力が発揮されたことが原因に違いない。
 隕石の衝突による隣国の被害は凄まじかった。死者、行方不明者の数はおおよそ五〇〇万人。負傷者の数はさらに多い。経済的損失は軽く見積もっても一〇〇兆円以上に上り、歴史的文化財の消失は計り知れないほどだった。隣国の隕石衝突事件は、人類史上、最大最悪の事件となったのである。
 隕石衝突により、隣国の政府機能は完全に破綻した。そしてそれを機に、いままで積もりつもっていた政府に対する反感が大爆発を起こし、隣国全土で大規模な暴動が発生したのである。無政府状態と相まって、隣国は内戦状態に突入し、それに乗じて各地の少数民族が隣国からの分離独立を目指し立ちあがった。内戦は約三年にわたって続き、隣国はおよそ二〇の国に別れ、消滅した。この内戦による死者の数は一説によると六〇〇〇万人を超えたとされている。それは第二次世界大戦の犠牲者の数を超えた数字であった。

「隕石でも衝突すれば面白いかな」

 全ては、綾乃の一言で引き起こされた惨事である。そして、その一言を口にさせた原因は、正樹にあるのだった。
 正樹は途方もない眩暈を覚えつつも、どうにか立ち直り、決意した。

「これ以上、綾乃に余計なことは言わせまい・・・・・・」

 それが自分に課せられた贖罪だと思い込むことによって、彼は心の安定を保とうとしたのである。
 だが、その努力は徒労で終わることとなる。
 三年後、隕石衝突事件とは比較にならないほどの大事件が起こるからだ。それはまさしく、人類生誕以来、最大最悪の事件だった。
 宇宙人襲来。
 例によってそれは、綾乃の一言が原因であった。

神なる少女  第8話

 年月が流れ、正樹と綾乃は高校生になっていた。進学先はもちろん、同じ。
 高校生になってはじめてとなる夏休み、ふたりはデートも兼ねて買い物に出かけていた。店から店へと渡り歩き、服やアクセサリー、小物類などを買った。そして休憩のため、とあるファストフード店に入った時、ふと、店内のテレビに視線がいった。テレビでは丁度、隣国での反日デモのニュースを報じていた。
 隣国では最近、連日のように大規模な反日デモがおこっていた。隣国の各都市で、数千、数万人規模のデモ隊が反日のシュプレヒコールをあげながら街を練り歩く。それだけならまだいい。だが彼らは、自らの欲望を満たすため、この機に乗じて日本企業や商店を襲って商品や金銭を略奪したりするのだ。その有り様がテレビや新聞を通して毎日のように日本中で報じられた。
 愛国無罪を叫び、傍若無人にふるまう隣国人に対し、多くの日本人が憤りと不快感、そして何もしない日本政府に対しいらだちを覚える日々を送っていた。正樹もそのひとりだった。どうにかできないものか。そう思いながら。
 注文したクリームソーダをストローでかき混ぜながら、正樹が無意識に問うた。

「・・・・・・なぁ綾乃、どう思う?」
「どうって・・・・・・何が?」
「いや、その、隣の国の反日活動のことだよ。あれだけ暴れて、あれだけ壊して、あれだけ略奪して、それで日本人にも負傷者が出て――にも関わらず、愛国無罪を叫べば誰もお咎めなし。どう思う、ほんと」
「ん~、そうねえ・・・・・・」

 しばし考えつつ、注文したオレンジジュースを三分の一ほど飲み干してから、綾乃は言った。

「わたしもやっぱり不愉快かな。だって見てて腹立つもん。だから天罰でも下ればいいのになって思うよ」

 それを聞いて、正樹の心に衝動が芽生えた。かねてより抱いていた、綾乃の能力を確かめたいという衝動が。
 ゆえに、ためらいを覚えつつも、聞かずにはいられなかった。

「なら綾乃は、どんな罰が下ればいいと思う?」
「そうねえ・・・・・・」

 問われた綾乃は宙を見ながら考えつつ、残っていたオレンジジュースを飲み干してから、悪意ない無邪気な声で宣告した。顔に笑顔を浮かべながら。

「隕石でも落ちれば面白いかな。まさに天罰覿面ってことで」
「・・・・・・」

 正樹は一瞬、自分の行いを後悔した。
 もし綾乃の能力が本物であれば、隣の国には本当に隕石が落ちることになる。そうなれば大勢の人間が死傷するであろう。反日抗議活動とは比べものにならないほどの被害がでるはずだ。

「もしかしたら自分は、とんでもないことをしてしまったのではないか・・・・・・」

そう思わずにはいられなかった。
 ただ、まだ綾乃の能力が本物と決まったわけではない。これまでのことはすべて偶然の産物で、自分の不安は杞憂で終わるかもしれないのだ。
 だが、そうはならなかった。
 綾乃の能力は本物だったのだ。そのことを、正樹はしばらくのちに痛感することとなった。
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